ことばの通い路

たまに何か書きます

クールモアの有力馬2022

毎年恒例のバリードイルのステーブルツアーを紹介します。

www.attheraces.com

古馬は全頭、3歳馬は何頭かピックアップする形で紹介します。

なおエイダン・オブライエン厩舎の管理馬一覧は、以下ツイートのリンク先からAIDANOBRIENFANSITE様作成のPDFで確認できます。

調教師のコメントはDeepL翻訳を利用しています。

古馬(4歳以上 牡・牝)

  • Bolshoi Ballet  ボリショイバレエ 4 牡

Galileo 母Alta Anna(母父Anabaa) 

「彼は復帰の途上にあります。彼は準備の初期に小さな骨折をしたため、その影響で私たちはすっかり遅れをとってしまいました。復帰は、早くてもシーズン中盤になると思います。」

まずはボリショイバレエ。昨年はレパーズタウンのGⅢバリーサックスS、愛ダービートライアルと連勝し、堂々の1番人気でCazooダービーに臨みましたが結果は7着。

気を取り直して向かったアメリカではベルモントダービーを制してGⅠ初勝利を挙げました。

ターフトリニティ*1制覇を目指しサラトガダービー、ジョッキークラブダービーに出走しましたが、共に4着。

その後もBCターフ6着、香港カップ9着と、良いところなく2021年のシーズンを終えています。

今年は復活を期して臨むシーズンとなるはずでしたが、骨折してしまった模様。

復帰はシーズン中盤以降とのことで、万全の態勢でベルモントダービー馬が戻ってくることを願っています。

  • Broome ブルーム 6 牡

父Australia 母Sweepstake(母父Acclamation)

「ブルームはまだ復帰の途中です。前走のジャパンカップの後、鞍を外している時に馬に蹴られて脛骨を骨折し、しばらく休養を余儀なくされました。ロイヤルアスコットに出走できるようになるといいんですが。」

キーファーズとの共同所有馬であるブルーム。

シーズン初戦から3連勝で臨んだタタソールズゴールドカップではヘルヴィックドリームの僅差の2着。

その後ロイヤルアスコットでのハードウィックS2着を挟んで向かったサンクルー大賞では、逃げの戦法に出て待望のGⅠ初制覇を挙げました。

フォア賞ではディープボンドの2着、凱旋門賞では武豊騎手を鞍上に迎え臨みましたが11着。

またBCターフでは直線でユビアーの強烈な追い込みに屈し半馬身差の2着に敗れました。

その後は日本に遠征しジャパンカップに出走するも11着と振るわず、レース後には第4中手骨の骨折が判明。全治3カ月と診断されました。*2

エイダン厩舎唯一の6歳馬で、今シーズンも現役を続行するようです。ロイヤルアスコットに間に合うか微妙なようですが、間に合えば距離的にプリンスオブウェールズSになるでしょうか。

前述したように2着が多い馬で、今季はサンクルー大賞以来の勝利を期待したいです。

Galileo 母Palace(母父Fastnet Rock)

「週末に行われたカラでの調教ではとても良い動きを見せてくれたので、来月のアレジッドSか5月のムーアズブリッジSのどちらかで始動させることを考えています。今となっては、昨シーズンの彼は弱すぎたのかもしれません。2歳時に2回目の出走をさせたのはやりすぎだったかもしれませんし、私たちが考えていた以上に力を出し切ったのかもしれません。」

2歳時のベレスフォードSでは最後方から豪快に差し切り勝利を収め、そのパフォーマンスからCazooダービーの有力候補と目されました。

しかし2021年は血液検査の結果などで問題が発生し復帰が遅れ、ダービーの前哨戦ダンテSでようやく始動したもののハリケーンレーンの3着。ダービーは回避して愛ダービーへ回ることになりましたが、全く伸びず10着に沈みました。

その後もグレートヴォルティジュールS、英セントレジャーを使いましたが結果は残せず。そのまま休養に入りました。

ベレスフォードSの評価が非常に高くブックメーカーでは長らくダービー1番人気に支持されており、筆者もPOGザワールド*3で指名馬に挙げるほど個人的に期待していたので、ダンテSはともかく愛ダービー10着はショックでしたね…

昨年終盤の走りを見ると正直復活は難しいかなとも思ってしまいますが、まずは今シーズン初戦でどこまで状態が戻っているかに注目したいところです。

  • Mother Earth マザーアース 4 牝

父Zoffany 母Many Colours(母父Green Desert

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Mother Earth (Photo by https://world.jra-van.jp/db/horse/H1010098/ )

「彼女は、ここで調教を続けている主力の古牝馬です。カラでの復帰戦勝利には満足しており、この勝利は彼女にとって大きな収穫となるでしょう。シーズンを通して1マイル以上のGⅠレースでは、牝馬はもちろん牡馬相手でも多くの選択肢があるはずです。」

昨年は始動戦の英1000ギニーでクラシック制覇。

その後はプール・デッセ・デ・プーリッシュ*42着、コロネーションS3着、ファルマスS2着、ロートシルト賞1着、メイトロンS3着、サンチャリオットS2着と非常に安定した走りを見せました。

牡馬と激突したクイーンエリザベスⅡ世S、BCマイル香港マイルでは5着、10着、4着と着順を下げましたが、年間を通してマイルGⅠ計10戦を戦い抜いたのは立派でした。

3月26日のパークエクスプレスSでは早速復帰戦勝利を挙げています。

サンタバーバラ*5やスノーフォール*6の早世などもあり厩舎唯一の古馬牝馬となってしまいました。かつての同僚たちの意志も引継ぎ、今年もマイル路線の中心的存在として引っ張っていってほしいです。

なお、記事執筆時点でロッキンジSタタソールズゴールドカップにエントリーしています。*7

  • Order Of Australia オーダーオブオーストラリア 5 牡

父Australia 母Senta's Dream(母父Danehill

「前走のブリーダーズカップマイル*8で小さな骨折を負ったが、今は復帰して絶好調です。昨シーズンは周りのベストマイラーに肉薄し、よく調子を維持していました。最初の大きな目標としては、ロイヤルアスコットクイーンアンSを考えています。その前にレースで走らせるか、競馬場で調教を行うかは、時期が近づいてから決めたいと思います。ロッキンジSには間に合わないと思います。」

昨年は古牡馬のマイル路線を歩みフランスではジャックルマロワ賞ムーランドロンシャン賞で3着、2着と好走しましたが、GⅠ勝利は挙げられませんでした。

前走のアメリカ遠征では骨折した影響もあってか12着と沈みましたが、既に回復しているようです。

GⅠ4勝のイリデッサ、前述したサンタバーバラの半弟という超良血。一昨年のBCマイル以来のGⅠ勝利を期待したいです。

Galileo 母Chelsea Rose(母父Desert King

「週末にカラで追い切りをしました。いい状態を保っていると思います。4月23日にナヴァンで行われるヴィンテージクロップSから始動するかもしれません。」

基本的に長距離路線を使われており、愛ダービーパリ大賞ではハリケーンレーンの3着、2着。

グロリアスグッドウッド開催のゴードンS、また愛セントレジャートライアルは共に5着と、この馬何気にデビュー以来掲示板を外したことがありません。(なお勝利はメイドン戦の1回だけ…)

復帰戦と予想されるヴィンテージクロップSは2800mで、過去にオーダーオブセントジョージ、フェイムアンドグローリー、イェーツと長距離界の超一流馬たちが勝ってきたGⅢレースです。

その他のレースとしてはヨークシャーカップタタソールズゴールドカップに登録があります。

3歳馬(3歳 牡・牝)

Camelot 母Attire(母父Danehill Dancer

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Luxembourg (Photo by https://www.racingandsports.com/thoroughbred/horse/luxembourg/1745605 )

「週末のカラでの動きには皆とても満足しており、直行で2000ギニーに臨むことになるでしょう。この馬とポイント・ロンズデールとの間には大きな差はなく、この2頭には十分なチャンスがあります。2頭ともダービーの距離もこなしてくれることを願っています。彼はキャメロットよりも大きな馬ですが、よりスピードがあると思います。彼は速く走るのが簡単だと思っています。キャメロットモンジュー産駒で唯一3歳時にマイルのGⅠを勝利しましたが、この馬はおそらく2000ギニーに適しています。」 

3戦無敗でフューチュリティトロフィーを制したルクセンブルク

ブックメーカー各社では現在2000ギニーゴドルフィンのネイティブトレイル、コロイバスに次ぐ3番人気、Cazooダービーでは1番人気に支持されています。

ちなみにフューチュリティトロフィーは2000ギニーと縁があるレースで、過去4年の勝ち馬のその後を見ると

2017年 サクソンウォリアー 2000ギニー1着
2018年 マグナグレシア   2000ギニー1着
2019年 カメコ       2000ギニー1着
2020年 マックスウィニー  愛2000ギニー1着

以上のように英か愛の2000ギニーを制しています。この流れがルクセンブルクにも続くでしょうか。

なおWesterbergとの共同所有馬で、画像の勝負服はWesterbergのものです。

Westerbergはゲオルグ・フォン・オペル氏が運営する競馬組織で、前述のハイデフィニションやサンタバーバラも共同所有しており近年クールモアと結びつきを強めています。

氏はドイツの自動車メーカー「オペル」の創業者アダム・オペルの曾孫で、レースやビジネスで財を成しているようです。*9

またクールモアの近年の動向を見ると、Westerbergがクールモアに接近しているというよりも、クールモア側が積極的に共同所有を進めているように感じます。

日本のキーファーズもその一環でしょうし、ゲイリー&メアリー・ウエスト夫妻とのマキシマムセキュリティや、フラックスマンステーブルズ*10とのサーカスマキシマスなどアメリカやフランスの大物馬主とも共同所有を進めています。

父Australia 母Sweepstake(母父Acclamation)

「週末のカラでの彼の追い切りにはとても満足しています。彼とルクセンブルグが一緒に追い切りをしたのは初めてでした。この2頭はとてもよく動いたと思うし、このまま2000ギニーに行かせるつもりです。彼は父親のオーストラリアを思い出させます。彼は素晴らしい頭脳を持っていて、とても勇敢です。スピードも十分で、距離も持ちます。昨シーズンは柔らかい馬場でレースをすることが多くありましたが、この馬は良い馬場を好みます。」

4連勝で迎えたヴィンセントオブライエンナショナルSでは、昨年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ネイティブトレイルの2着に屈しました。

ネイティブトレイルには3馬身差をつけられ完敗というレースでしたが、ブックメーカーでは2000ギニー4番人気、ダービーではそのネイティブトレイルを上回る2番人気に押されています。

この馬はまだ1400mまでしか経験がないので、距離が伸びてどうなるか楽しみです。

話が逸れますが、前述したPOGザワールドでは3歳馬に5ポイント加算されるので、いかにレーティングを稼げる3歳馬を選ぶかが勝負のポイントになります。

その点、この馬を含めたクラシック上位人気の取捨がキーになるのは間違いなさそうです。

なお昨年のカルティエ賞年度代表馬セントマークスバシリカを含め、毎年のように古馬GⅠ馬を輩出するデューハーストSは、昨年ネイティブトレイルが制しています。

  • Star Of India スターオブインディア 3 牡

Galileo 母 Shermeen(母父Desert Style)

「ギニー馬になりそうなのか、ダービー馬になりそうなのかを判断するために、週末にカラで追い切りを行いましたが、少し鈍いところがあり判断が難しく、必ずしも明確な答えは出ませんでした。のんびりした性格のため、上限を設けたくはありませんが、コースでテストしてみないと、その実力はわかりません。今はまだ、選択肢を広げている段階です。」

1戦1勝のスターオブインディア。2¼馬身差で快勝しています。

エイダンもまだよく分からないらしいです。そんなの我々にも分かる訳ないですね。

ブックメーカーでは2000ギニーで34倍くらいです。

  • Glounthaune グラウンサウーン 3 牡

父Kodiac 母Khaimah(母父Nayef

「今週末にレパーズタウンで行われる2000ギニートライアルに出走させる予定です。とても調子が良く、スピードも十分です。昨年4月のデビュー戦の勝利の後、彼には多くの時間を費やし、私たちはシーズンを通して彼に追いつくのに精一杯でした。ブリーダーズカップでの走りは、彼にとってはあまりにも早すぎたのです。ライアンが言うには、彼はまだ未熟で、馬場の適応ができなかったそうです。彼はプーレ・デッセ・プーラン*11馬になれるかもしれません。」

4月にデビュー戦で勝利を挙げた後長く休養し9月のデューハーストSに出てきましたが、ネイティブトレイルの6着。

その後は2000ギニー馬ポエティックフレアが昨年制したレパーズタウンのGⅢキラヴランSを勝利したものの、BCジュベナイルターフでは12着に沈みました。

どうやらフランスに連れていくプランがあるようです。昨年はセントマークスバシリカが仏二冠を達成したことは記憶に新しいですが、その再現となるでしょうか。

Deep Impact 母Best In The World(母父Galileo

「昨年はとてもよく動いていたので、10月のダンドークへの出走を表明しましたが、それは見送ることにしました。彼は賢い馬のように動くので、スタートを切るのが楽しみです。」

まだ未出走のニューファウンドランド。ダービーではブックメーカーで26倍程です。

何と言っても父ディープインパクト、そしてあのスノーフォールの全弟です。

未出走ながらダービーで一定の支持があるのも、全姉が見せたエプソムでの圧倒的なパフォーマンスが念頭にあることは間違いありません。

伯母にも凱旋門賞ファウンドがいる超良血。期待は大きいです。

  • Tenebrism テネブリズム 3 牝

父Caravaggio 母Immortal Verse(母父Pivotal)

「週末のカラでのテネブリズムの動きにはとても満足しています。ライアンも彼女にとても満足していました。彼は彼女がマイルを走る可能性は十分にあると感じていました。7.5ハロンの良い追い切りを行い、彼女はそこから良い経験を得ています。彼女は1000ギニーに直行するでしょう。」

前走ニューマーケットのチェヴァリーパークSを制し、2戦2勝でGⅠ初勝利を挙げたテネブリズム。

父は世界のスキャットダディ産駒カラヴァッジオ、母はマイルGⅠ2勝のイモータルヴァース。

1000ギニーブックメーカーでは、昨年フィリーズマイルを制しカルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝いたインスパイラルに次ぐ2番人気です。

馬主はクールモアと前述のWesterberg、生産者であるMerribelle Stablesとの共同所有です。

  • Tuesday チューズデー 3 牝

Galileo 母Lillie Langtry(母父Danehill Dancer

「日曜日のネースでのパフォーマンスにはとても満足しています。彼女はこのレースで大きく成長したし、距離も持ちそうな馬です。彼女はリラックスしており、のんびりしています。1000ギニーにはまだ早いかもしれないので、ギニーのトライアルでもう一度走らせてから、アイルランド1000ギニーに挑戦することになるかもしれません。その後、オークスの有力馬になるかもしれません。」

母はGⅠ2勝のリリーラングトリー、全姉に英牝馬二冠を含むGⅠ7勝のマインディング愛1000ギニー馬エンプレスジョセフィーヌを持つチューズデー。

デビュー戦こそ後のGⅠモイグレアスタッドS勝ち馬Discoveriesに短アタマ差の2着に惜敗したものの、3月27日のネースでのメイドン戦で初勝利を挙げました。

愛1000ギニーが目標となるようですが、ミュージドラステークスから英オークスを目指すプランもあるようです。*12

なおこの馬もWesterbergとの共同所有です。

*1:NYRA(ニューヨーク州競馬協会)主催のニューヨーク3歳芝三冠競走

*2:https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=196614

*3:グリーンチャンネルの番組「Go Racing!」で毎年企画されている世界版のペーパーオーナーゲーム。2022年の概要は下記のリンク先から。 https://www.greenchannel.jp/program/goracing.html

*4:仏1000ギニー

*5:米に遠征しGⅠ2勝。9月に骨盤骨折で死亡。

*6:16馬身差で圧勝した英オークス含むGⅠ3勝を挙げたディープインパクト産駒。2022年1月に骨盤骨折で死亡。

*7:日本と違い登録イコール出走ではないことに注意。

*8:BCマイルではなくキーンランドターフマイルだと思われる。

*9:詳しくは以下リンク先を参照。 https://www.racingpost.com/bloodstock/westerberg-buys-into-coolmore-classic-hopefuls-high-definition-and-santa-barbara/468436

*10:ニアルコスファミリーの馬主・生産組織。

*11:仏2000ギニー

*12:https://world.jra-van.jp/news/N0010647/

凱旋門賞 タルナワ記事和訳

こんにちは。

Racing Postに掲載されていた、凱旋門賞後のタルナワ陣営の記事を簡単に和訳します。

www.racingpost.com



「あんなに雨が降っていなければ勝っていた」タルナワの惜敗を嘆くウェルド師

ダーモット・ウェルド調教師は、土曜日の夜に雨が降らなければタルナワが凱旋門賞を勝っていただろうと考えているが、重馬場での2着馬の戦いぶりには誇らしさで一杯だった。

大きな人気を博していたこの5歳馬は最後の1ハロンではあらゆるチャンスがあったが、3/4馬身差で制した衝撃的な勝ち馬Torquator Tassoには及ばなかった。

満員のパレードリングの中で、ウェルド師には落胆した様子はない。ただ最高のコンディションで臨んだにもかかわらず、最高のパフォーマンスを発揮できなかったことを悔やんでいた。

「彼女は素晴らしいレースをしたし、よく戦った」と、勝利と惨敗の間の紙一重の差を十分に意識してウェルド師は言う。

「彼女は完璧な状態でこのレースに来たし、スミヨンも素晴らしい騎乗をしてくれた。」

「彼女は頑張っていたし私たちも言い訳はしないが、我々はタルナワのスタミナを見たのであって、スピードを見たのではない。」

「彼女のスピードはこの重馬場では無効にされてしまった。土曜の夜にあんなに雨が降っていなかったら、私たちは勝っていただろう。」

「雨が降ってきた時点で心配になった。彼女は昨年のBCターフや今年の愛チャンピオンSで見られたように、とてもペースが速く、ソフトなハンドリングをするが、今日の糊状の地面ではどうしてもスピードが出なかった。」

1972年に調教を始めて以来、世界中の大レースで勝利を収めてきたウェルド師は、初の凱旋門賞制覇まであと一歩のところで迫った後に哲学的なコメントを残した。

「タフなレースだから、このような不運を受けることもある。」

コリン・キーンに代わってフランスでアガ・カーン殿下の専属騎手として騎乗したクリストフ・スミヨンは、調教師の意見に同意し、もう少し良い馬場だったらタルナワが「主役」になっていただろうと語った。

「彼女は素晴らしいレースをしたのだから、私は失望していないし、何も恥じることはない」と彼は述べた。

「勝ち馬は、直線でずっと私達に半馬身から4分の3馬身の差をつけていた。もしも鼻差で負けていたら、アンラッキーだったと思うかもしれないし、私もうんざりしていたかもしれないが、悲しいことに馬場が少しばかりベタつき過ぎていた。」

「私は素晴らしいレースができたし、少し心配していたが彼女はうまくブレイクしてくれた。」

「理想的な走りをして、残り400メートルのところでスパートを入れたが、ドイツ馬の勝負服が見えた瞬間に、これは難しいだろうと思った。」

「彼女には満足している。ダーモット(ウェルド師)と彼のチームは、今年2戦で彼女をこの舞台に連れてくるという信じられないような仕事をしてくれた。」

「彼女には、海外でまた良いレースに勝つチャンスがあることを願っている。彼女はスーパースターだし、凱旋門賞で2着になったことは恥じることではない。もう少し良い馬場であれば、彼女は主役になっていた。」

タルナワが主役の座に立つまで、そう長くはかからないかもしれない。ウェルド師は、来月アメリカに戻ることが「確かな可能性(definite possibility)」であると述べ、BCターフ連覇に向けてオッズは7-2の4.5倍から11-4の3.75倍に下げられた。


www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳したものを修正しています。

サラトガGⅠデー展望

こんにちは。

アメリカのサラトガ競馬場では、8月28日の午後(日本時間で29日早朝)に、GⅠ競走が一挙6レースも行われる大イベントが開催されます。

本記事ではこの開催で行われるレースの基本情報と主な有力馬をまとめたので、展望していきたいと思います。

なお本記事で使用する情報・データは以下のサイトを主に参考にしています。

Equibase

Racing post

優駿達の蹄跡

JRA-VAN Ver.World



サラトガ競馬場

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Saratoga Race Course (Photo by https://world.jra-van.jp/news/N0007233/)

サラトガ競馬場ニューヨーク州サラトガスプリングスに位置する競馬場で、ニューヨーク競馬協会(NYRA)が運営を行っています。*1

サラトガ競馬場では28日に行われる6競走を含め、年間18ものGⅠ競走が開催されています。*2

なお時差についてですが、アメリカは現在サマータイム*3期間のため、ニューヨーク州のある東海岸の東部時間(EDT)と日本との時差は13時間です。

Ketel One Ballerina Handicap

第7レース バレリーナハンデキャップ 

15:02発走(日本時間4:02) 7F 3歳上牝馬 ダート 7頭立て

28日のGⅠ競走1レース目はバレリーナハンデです。

3歳以上の牝馬限定戦で、ダートの1400mで行われます。

モーニングライン(ML)*4での1番人気はGamine(ガミーン)で、3-5の1.6倍と抜けた人気になっています。

4歳牝馬のGamineは名門ボブ・バファート厩舎、父は目下2年連続全米リーディング種牡馬のInto Mischief。

過去9戦して8勝、唯一の黒星は昨年のケンタッキーオークスで、3位入線後禁止薬物のベタメタゾンが検出されたことでDQ*5になったものです。

GⅠは2020年エイコーンS、テストS、BCフィリー&メアスプリント、21年ダービーシティディスタフSと4勝を挙げています。

2020年にはエクリプス賞最優秀短距離牝馬にも輝きました。

距離が長かったケンタッキーオークスを除けば非常に安定した成績を残しており、ここも通過点となりそうです。鞍上はJ・ヴェラスケス。

2番人気はCe Ceで5倍。GⅠは昨年のビホルダーマイル、アップルブロッサムハンデの2勝しています。

Forego Stakes

第8レース フォアゴーステークス

15:37発走(日本時間4:37) 7F 4歳上 ダート 8頭立て

GⅠ競走2レース目のフォアゴーSは4歳以上のダート1400mで行われます。

現在日本で種牡馬となっているパイロやドレフォンが過去に勝っているレースです。

ML1番人気はYaupon(ヤウポン)で3.5倍。

父は昨年リーディング3位のUncle Mo、調教師は今月に北米歴代最多勝記録を更新したスティーヴン・アスムッセン。

過去7戦して5勝、重賞は2勝。昨年のBCスプリントと今年3月のドバイゴールデンシャヒーンは共に8着に負けています。

前走ピムリコの条件戦を初コンビで制したRサンタナJr.を鞍上に、GⅠ初勝利を狙います。

4.5倍で2番人気のMind Controlは18年ホープフルS、19年アレン・ジャーケンスSと過去GⅠ2勝を挙げています。

その後しばらく低迷しましたが前走ジョン A. ネルードS(GⅡ)で9戦ぶりに勝利を収めました。

H Allen Jerkens Memorial Stakes

第9レース H・アレン・ジャーケンスメモリアルステークス

16:12発走(日本時間5:12) 7F 3歳 ダート 6頭立て

GⅠ競走3レース目のアレンジャーケンスSは3歳限定のダート1400mで行われます。

過去の勝ち馬にはモアザンレディ、ヘニーヒューズハードスパン、ドレフォンなど。

このレースには何と言っても、春までは今年の3歳世代の押しも押されぬ大本命だったLife Is Good(ライフイズグッド)が出走してきます。

このInto Mischief産駒の3歳馬は昨年秋のデビューから無敗の3連勝を飾り、特に前走GⅡサンフェリペSでは8馬身差の圧勝で制しました。

ケンタッキーダービーのフューチャーウェイジャー*6でも1番人気に支持されており、クラシックの最有力候補と目されていながら、故障により無念の戦線離脱。

休養中に調教師はボブ・バファートからトッド・プレッチャーに代わり、復帰時期としてはBCには間に合うだろうとのことでしたが、ようやく復帰戦が決まりました。

レーティングでも既に120を獲得しており、北米の3歳馬ではベルモントSを制したエッセンシャルクオリティ(121)に次ぐ2位。

BCではこの数字を更に伸ばしてくれることを期待しています。

さすがに復帰戦とあってMLオッズは2.6倍の2番人気で、鞍上は名手マイク・スミス。

1番人気はJackie's Warriorで、オッズはEvens*7の2倍。

昨年はサラトガホープフルSベルモントパークのシャンペンS(共にGⅠ)を勝っています。

Personal Ensign Stakes presented by Lia Infiniti

第10レース パーソナルエンスンステークス

16:47発走(日本時間5:47) 1M1F 4歳上牝馬 ダート 9頭立て

GⅠ競走4レース目のパーソナルエンスンSは4歳上牝馬のダート1800mで行われます。

1番人気はLetruska(レトルスカ)で2.2倍。鞍上はI オルティス Jr. 。

この5歳のスーパーセイヴァー産駒は元はメキシコで走っていた馬で、メキシコのGⅠを2勝しています。

その後北米で走り、今年に入ってアップルブロッサムH、オグデンフィップスSとGⅠ連勝、その後のフルールドリスS(GⅡ)を含めて重賞3連勝中です。

アップルブロッサムHではGⅠ7勝馬モノモイガール、プリークネスS馬スイススカイダイバーを下しての勝利でしたが、そのSwiss Skydiverもここに出走してきます。

スイススカイダイバーは4.5倍の2番人気で、昨年のアラバマSでGⅠ初勝利を飾った後、ケンタッキーオークスではシーデアーズザデビル(オグデンフィップスでは3着)の2着。

その後は牡馬戦線へ殴り込みをかけ、プリークネスSではケンタッキーダービー馬オーセンティックを下し、レイチェルアレクサンドラ以来の史上6頭目牝馬の優勝となりました。

今年に入りビホルダーマイルSを制しGⅠ3勝目を挙げましたが、アップルブロッサムHの敗戦後ホイットニーSでもニックスゴーの4着。

レトルスカへのリベンジが掛かる一戦です。

またアメリカンファラオ産駒が2頭出走し、Harvey's Lil Goil(ハーヴェイズリルゴイル)は昨年のクイーンエリザベス2世チャレンジカップSで産駒初のGⅠ勝利を挙げています。*8

もう一頭はバファート厩舎でクールモア*9As Time Goes Byで、重賞2勝。

Harvey's Lil Goilが9倍の4番人気、As Time Goes Byが7倍の3番人気。

Resorts World Casino Sword Dancer Stakes

第11レース ソードダンサーステークス

17:25発走(日本時間6:25) 1M4F 4歳上 芝 7頭立て

GⅠ競走5レース目のソードダンサーSは4歳上の芝2400mで行われます。

ミスター・シルバーコレクターのフリントシャーが連覇したことで有名なレースですが、今年はJapan(ジャパン)が遠征してきます。

エイダン厩舎の5歳馬は3歳時にパリ大賞とジャドモントインターナショナルを連勝し、後者ではその年のプリンスオブウェールズS勝ち馬クリスタルオーシャンに競り勝ちました。

その後は長い低迷期に入り、欧州ではGⅢを勝つのがやっとといった現状です。アメリカで久々のGⅠ勝利となるでしょうか。

MLでは5.5倍の4番人気。

1番人気は前走モンマスパークのGⅠユナイテッドネイションズSを制したTribhuvanです。

元はフランスで走っていた馬で、アメリカのチャド・ブラウン厩舎に移籍後、初重賞制覇・初GⅠ制覇をそれぞれ達成しています。

父はリチャードハノン厩舎でサセックスSクイーンアンSを制したToronado、オッズは3倍に支持されています。

Runhappy Travers Stakes

第12レース トラヴァーズテークス

18:12発走(日本時間7:12) 1M2F 3歳 ダート 7頭立て

メインのGⅠ6レース目は、別名Mid-Summer Derby(真夏のダービー)トラヴァーズSです。

過去に様々な名馬が制したこのレース、近年ではティズザロー、アロゲートサマーバードストリートセンスバーナーディニメダグリアドーロなどに、ティファニーのトロフィとカーネーションのブランケットが送られています。

4-5の1.8倍、堂々のML1番人気はEssential Quality(エッセンシャルクオリティ)。

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Essential Quality (Photo by https://world.jra-van.jp/db/horse/H1010638/)

リーダーズフューチュリティ、BCジュベナイルを含む破竹の無敗5連勝でケンタッキーダービーに歩を進めましたが、メディーナスピリットの4着に敗北。*10

プリークネスSを回避して臨んだベルモントSでは、ケンタッキーダービー3着ホットロッドチャーリーやプリークネスS馬ロンバウアー相手に、1と四分の一馬身差で貫禄の勝利を収めました。

ブラッド・コックス厩舎のタピット産駒は7月のジムダンディS(GⅡ)も勝利し、クラシック世代の総大将としてGⅠ4勝目を狙います。鞍上はルイス・サエス

5.5倍の2番人気はMidnight Bourbon(ミッドナイトバーボン)で、ケンタッキーダービーは6着、プリークネスSはRunner-up*11でした。

その後に臨んだハスケルSでは、ホットロッドチャーリーの斜行に巻き込まれ落馬・競争中止でDNF*12*13となりました。

Sアスムッセン厩舎のティズナウ産駒、鞍上はR サンタナ Jr.になります。

3番人気は7倍で2頭並んでおり、Keepmeinmindは前走ジムダンディSで2着、Dynamic Oneは前走リステッドのカーリンSを制しています。

まとめ

以上、28日のサラトガGⅠ6レースを展望しました。

日本時間では早朝4時頃~7時頃と、全部見ようとすると中々大変な時間ですが、ここまで読んでくれた方は是非結果だけでもチェックしてみてください。

レースのライブは以下のNYRAのYoutubeチャンネルで配信してくれるはずです。

www.youtube.com

また、NYRAや、At The Racesの公式ツイッターでは速報映像をツイートしてくれるはずなので、こちらも要チェックです。

公式な結果はEquibaseで調べると分かりやすいと思います。

JRAのホームページでは競馬主要国の情報サイトの見方も説明してくれているので、Equibaseの見方が分からないという方は参考にどうぞ。

年末に向けて、愛・英チャンピオンズデーや凱旋門賞ウィークエンド、ブリーダーズカップ香港国際競走などなど、このサラトガ開催よりもさらに規模の大きな開催が続々と続いていきます。

海外競馬に興味があるという方、もしくはこの記事を読んで少しでも興味が湧いたという方がいれば、今後も展望記事含め海外競馬関連の記事を書いていきたいと思いますので、是非読んでいただければ幸いです。

それでは。

*1:NYRAが運営する競馬場には他に、シガーマイルHなどが行われるアケダクト競馬場ベルモントSなどが行われるベルモントパーク競馬場がある。

*2:2021年現在。

*3:アメリカではDaylight Saving Time (DST)

*4:主催者発表の予想オッズ。欧州やアメリカ競馬のオッズについて、「3-2」や「3/2」とフラクショナル(分数)形式で書かれている場合は、右の数字と左の数字を足したものを右の数字で割る。この場合なら(3+2)÷2=2.5倍となる。なおアメリカなどでは一見日本式のように「5」と単独の数字だけ表示されている場合があるが、この場合も実際には「5-1」の右側の1が省略されていると考え、(5+1)÷1=6倍と読む。

*5:disqualified:失格

*6:ケンタッキーダービーの長期前売り。5回程度のプールに分けて行われる。

*7:1-1のオッズのこと。

*8:アメリカンファラオ産駒のGⅠ勝利は他に、Van Goghのクリテリウム・アンテルナシオナルとカフェファラオのフェブラリーSの計3勝。

*9:アイルランドに拠点を構える世界的オーナーブリーダークールモアの有力馬2020 - ことばの通い路 を参照。

*10:バファート厩舎のメディーナスピリットは、レース後に禁止薬物ベタメタゾンが検出された。再検査でも陽性が示され依然として係争中。失格となる可能性もあり、その場合はマンダルーンが繰り上がり優勝となる。

*11:2着のこと。

*12:Did Not Finishの略。

*13:なおホットロッドチャーリーはDQとなりマンダルーンは繰り上がり優勝でGⅠ初制覇。上記注の通りケンタッキーダービーも繰り上がり優勝となる可能性がある。

2021 日本ダービー回顧~桜花賞と毎日杯組を中心に

今年の日本ダービーが終わりました。

1.7倍に支持された無敗の皐月賞馬エフフォーリアは惜しくも2着、栄冠を手にしたのは毎日杯を勝ってダービーに直行したシャフリヤール。

ウオッカ以来の牝馬のダービー制覇を狙った私の本命サトノレイナスは5着に敗れました。

普段レース回顧をブログに書くことはないのですが、今回はいくつか書き留めたいことがあったので、自身の思考の整理とこの結果を今後の競馬予想に繋げるためにまとめることにしました。

桜花賞毎日杯のラップ

まず初めに、桜花賞毎日杯のレースラップを振り返ります。

「競争馬は走る距離を知らない」ので、直前の経験はレースに大きく影響してきます。

各種数字はnetkeibaさん、競馬ラボさんから持ってきています。*1 *2

桜花賞

ラップ:12.1 - 10.8 - 11.2 - 11.1 - 11.6 - 11.2 - 11.2 - 11.9

ペース:12.1 - 22.9 - 34.1 - 45.2 - 56.8 - 68.0 - 79.2 - 91.1

前半:4F 45.2 - 3F 34.1/後半:4F 45.9 - 3F 34.3

桜花賞は年によってペースにばらつきがあり、過去10年でも4秒後傾のスローペースだった年から3.1秒前傾のハイペースだった年まであります。

今年の桜花賞は0.7秒前傾でしたが、前後半タイム差1秒以内と考えればミドルペースと言えそうです。

ただ、今年の桜花賞が特殊だったのは異様なまでの時計の速さです。

ソダシの勝ちタイム1:31.1はレースレコード、ラップを見ても3ハロン目以降11秒台を刻み続けていますが、この3ハロン目以降に12秒台が出現しなかった年は過去10年で一度もありませんでした。

サトノレイナスはスタートで出遅れコーナー通過順15-16とほぼ最後尾を追走し、直線前が開いてからようやくスパートをかけ上がり3F最速の32.9の脚で追い上げましたがソダシに届かず2着でした。

毎日杯

ラップ 12.4 - 11.2 - 10.9 - 11.4 - 11.7 - 11.9 - 11.5 - 11.2 - 11.7

ペース 12.4 - 23.6 - 34.5 - 45.9 - 57.6 - 69.5 - 81.0 - 92.2 - 103.9

前半:4F 45.9 - 3F 34.5/後半:4F 46.3 - 3F 34.4

毎日杯は過去10年でスローが6回、ミドルペースとハイペースがそれぞれ2回ありましたが、今年は前後半800m比較で0.4秒前傾のミドルペースでした。

こちらも後半8F連続で11秒台などという年は過去10年で一度もなく、今年の阪神がいかに高速馬場だったかということが分かります。

勝ったシャフリヤールは4-4、2着のグレートマジシャンは6-6と先行~中段前目を追走していました。

ダービーのレース展開

ダービーのラップタイムと1~5着馬までのコーナー通過順は以下の通りです。

ラップ 12.2 - 10.6 - 12.2 - 13.0 - 12.3 - 12.4 - 12.8 - 11.7 - 11.4 - 11.5 - 10.8 - 11.6

ペース 12.2 - 22.8 - 35.0 - 48.0 - 1:00.3 - 1:12.7 - 1:25.5 - 1:37.2 - 1:48.6 - 2:00.0 - 2:10.9 - 2:22.5

前半:4F 48.0 - 3F 35.0/後半:4F 45.3 - 3F 33.9

1着シャフリヤール 7-7-11-9

2着エフフォーリア 3-4-9-9

3着ステラヴェローチェ 13-14-13-12

4着グレートマジシャン 11-13-9-9

5着サトノレイナス 7-4-2-2

これを見て私が気になったのは、サトノレイナス毎日杯組の位置取りの差です。

桜花賞毎日杯も前傾気味のミドルペースで時計は非常に速く、ほぼ同じようなラップで推移しています。

また一般的に距離延長ではペースが緩む傾向があり、実際桜花賞毎日杯に比べてダービーは前半のペースが明らかに緩んでいるのが分かります。

サトノレイナスは前走前々走と出遅れて後方からの競馬が続いていましたが、ダービーは五分のスタートが切れました。

1コーナーでは良いポジションに付けたように見えましたが、向こう正面でそのまま進むと2、3番手まで押し上げ、大欅の手前で既に先頭に並びかけていきました。

これは2017年にルメール騎手がレイデオロでやったように、ペースが遅いと見て押し上げていったのかと思っていましたが、レース後のコメントを見る限りそうではないようです。

「1、2コーナーではいい位置を取れました。ただ、流れが遅くて向正面では我慢が利きませんでしたね。直線もよく頑張っていましたが、外にモタれていました。いいレースはできましたが、完璧ではありませんでしたね」*3

この「流れが遅くて我慢が利かなかった」というのは、デビューから一貫してマイルを使われ、また位置取りは後ろだったとはいえ前走前々走と高速馬場のミドルペースのレースが続いた影響があったと言わざるを得ません。

対して毎日杯組の2頭はサトノレイナスとほぼ同じ速いペースの前走を経験したにも関わらず、後方で脚を溜め直線差してくることができました。

桜花賞毎日杯で200mの距離の差はありますが前走経験はほぼ同じようなものだったと言っていいはずです。

それなのになぜサトノレイナスは我慢が利かず行ってしまい、毎日杯組は後ろで溜める競馬ができたのか。

もちろん馬の個性の問題だと言われればそれまでですが、一応何らかの理由付けがほしいということで色々考えてみました。

その結果、パトロールビデオにヒントを見つけることができました。

トロールビデオ分析

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1

これは1コーナー手前のパトロールビデオの映像ですが、黄色い印のシャフリヤールがグラティアスを、橙印のグレートマジシャンがワンダフルタワンをそれぞれ前に置いているのがわかります。

しかしサトノレイナスは内のアドマイヤハダルが下げ、外のバスラットレオンがハナを奪いに行った結果回りに馬がおらず、毎日杯組のように前に馬を置く形を作ることができませんでした。

この後すぐにシャフリヤールの横、グラティアスを斜め前に見るような形で1~2コーナーを通過します。

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2

次に2コーナーを通過し向こう正面に入ったあたりです。

パッと見で分かりますが馬群が大きく3つの縦の列に分かれています。

シャフリヤールは真ん中の列の前から3番手でヴィクティファルスを前に置き、グレートマジシャンは外の列の前から3番手で変わらずワンダフルタワンを前に置いています。

対してサトノレイナスは外の列の先頭に立ってしまいました。前を遮るものがないサトノレイナスは、じりじりと位置取りを上げていきます。

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3

しばらくそのまま進むと、シャフリヤールの後ろにいたはずのヨーホーレイクが外の列に張り出してきて、グレートマジシャンが隊列の外に弾き出されてしまいます。

このままならグレートマジシャンも前を遮るものがなくなり進出していってしまいそうですが、そうはなりませんでした。

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4

3コーナーのカーブに入るあたりで、外からアドマイヤハダルとディープモンスターが合わせるようにグレートマジシャンの外を上がっていきます。

これでグレートマジシャンはまた前に馬を置きつづけることになりました。

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5

直後の後ろからの映像ですが、確かにグレートマジシャンの前にアドマイヤハダルとディープモンスターが入っているのが分かります。

外から上がっていたこの2頭に影響を受けたかは分かりませんが、800mの標識を過ぎたあたりでサトノレイナスは一気に仕掛けて先頭に並びかけます。

その間もシャフリヤールはヴィクティファルスの後ろでじっとしていました。

これらの一連のパトロールビデオ映像から、終始前に馬を置き続けることができたシャフリヤール、グレートマジシャンに対して、サトノレイナスは前に馬を置いて落ち着かせることがほぼできず、少しずつ位置を押し上げていっているということが分かります。

これでは前走で見せた3F32.9の極上のキレ味を発揮することはできず、3着争いも最後は後ろから来たグレートマジシャンとステラヴェローチェに交わされてしまいました。

まとめ

前走で同様に速い流れを経験していたシャフリヤール、グレートマジシャン、サトノレイナスですが、前に馬を置いてペースに適応した毎日杯組、そうはならず我慢を利かせられなかったサトノレイナスで差が出たように思います。

サトノレイナスはこの3頭のどの馬よりもよりも外の16番枠に入ってしまったこと、左右の馬が下げたりハナに行ったりで後ろに付けられるような馬がいなかったこと、珍しくスタートが決まったことなど、これらの要因が複合的に噛み合った結果このような前目での競馬になったと言えます。

変な言い方ですが、もし今まで通りスタートで出遅れていれば、もっと後ろの位置取りで何らかの馬の直後に付けられたかもしれません。

そうなっていればステラヴェローチェのように直線だけの競馬でも楽に3着に突っ込んできた可能性は高いと思います。

しかし、それでは着を取ることはできても勝つことは難しかったでしょうし、スタートも決まった以上勝ちにいくために道中前目のポジションを取るという選択は決して間違ってはいなかったはずです。

上記のダービーのコーナー通過順を見ても分かるように、サトノレイナス以外は全て4角9番手以下から差してきた馬です。

4角4番手だった6着タイトルホルダーには2馬身の差を付けており、先行して残した馬はサトノレイナスだけでした。

基本的に出遅れて差しに回る競馬しか経験がなかったサトノレイナスがこのような競馬でも結果を残せたことは大きな収穫ですし、ダービー1、2着馬と比べても全く引けを取らない能力を発揮したと思います。

中央競馬全体として牝馬のレベルが上がっているのかは未だ検討の余地があると思いますが、少なくとも古馬混合のGⅠなど超一流の舞台で活躍する牝馬が増えているのは事実です。

今後もサトノレイナスのような明らかに抜けた馬いるようなら是非牡馬戦線に殴り込みをかけてほしいですし、今回のダービー参戦及び健闘が今後の牝馬の牡馬クラシック挑戦の追い風になればいいなあと思っています。

競馬にたらればは禁物ですが、そうは言ってももしもう少し内の枠に入っていれば結果はきっと違うものになっていたのでは…と私のような未熟者はつい考えてしまいます。

最後に他の馬を簡単に振り返りましょう。

ダービーは最も運の良い馬が勝つと言われるくらいですから、枠を利して、位置取りを利して、差し有利の馬場バイアスを利したシャフリヤールが完璧な競馬をしたことは揺るぎない事実です。

血統的にもディープインパクト×米国系はダービーの王道配合ですね。*4Essence of Dubaiドバイマジェスティの真の力を見た気がします。

アルアインは520kg前後で走る大型馬でしたが、兄に比べて馬体重が50kg以上軽いのでこれだけのキレが出るのかなあと考えています。

こちらも参考に。

ダービーを勝つディープ産駒はなかなかその後にパフォーマンスを伸ばせない馬が多いので、今後に注目していきたいです。

エフフォーリアはコントレイルで言うところの東スポ杯のような強烈なパフォーマンスがなかったので、そう簡単に無敗の二冠馬にはなれないだろうと思っていました。

皐月賞の3馬身差もカラクリとまでは言いませんがかなり色々な要素が絡んでいたと思いますし…

結果は首の上げ下げでほんのわずかの差でしたが、私の直感が当たってほっとしているというのが正直なところです。

また、朝日杯、共同通信杯皐月賞と本命を打ち続けてきたステラヴェローチェが3着に来てくれたことはとても嬉しかったです。

ダービーこそ本命を打てませんでしたが、3F33.4の鋭い差し脚を見せてバゴの能力を証明してくれたことは感謝しかないです。

凱旋門賞にも登録しているようですし、次走以降も非常に楽しみです。

バゴについては考えていることが結構あるのでまた近いうちにブログを書きたいと思います。

それでは。

クールモアの有力馬2021

今年もやりますクールモアの有力馬紹介。

www.attheraces.com

昨年に引き続き、海外競馬メディアであるat the racesでは、エイダン・オブライエン調教師が管理するクールモア陣営の有力馬の紹介記事が掲載されています。

昨年は古馬の記事内容を紹介した後に3歳馬もやると言っておきながら、結局手付かず終いでした。

今年は昨年の轍を踏まえ、古馬・3歳馬問わず筆者が独断と偏見で特に有力だと思った馬をピックアップして紹介したいと思います。

全馬の紹介が見たいという方は、どうぞ元記事をご覧になってください。

昨年と同様に、DeepL翻訳の力を借りつつ翻訳しています。

なお昨年は次走予定も記載されていたのでそれも載せましたが、今年は特に情報がなかったので書いていません。

古馬(4歳以上 牡・牝)

Galileo 母After(母父Danehill Dancer) 

「冬の間、彼はとてもよく頑張ってくれて、私たちはとても満足しています。昨年末にオーストラリアで1回だけ走らせたのですが、とても良い走りでした。今シーズンは、とてもいい馬になると思っています。彼には2000mが適していると思いますが、どこかの段階でもう少し距離を伸ばしてみる可能性も否定できません。速い馬場は彼にとても合っています。」

アーモリー愛2000ギニーでシスキンの4着に負けた後、タタソールズゴールドCではマジカルの4着。

GⅢロイヤルウィップSを快勝して迎えた愛チャンピオンSにおいてもマジカルの3着で、オーストラリアに遠征したコックスプレートではかつての同厩サードラゴネットの2着と、毎回そこそこに走りましたが今一つ突き抜けることができませんでした。

エイダンが2000mが合うと言った通り、タタソールズゴールドC以降は一貫して2000mレースを使われています。

基本的に中距離路線を使いつつ、馬場状態次第で2400mも使う余地があるといったところでしょうか。

  • Japan ジャパン 5 牡

Galileo 母Shastye(母父Danehill

「今年の彼にはとても満足しています。去年の今頃よりも確実に満足しているし、今年はもっといい馬になると思っています。彼は3歳から4歳のときよりも4歳から5歳のときのほうが変化していて、自分自身を成長させるためには時間が必要だったのかもしれません。去年は一度もクリアな走りができませんでした。シーズンの初めから彼を追いかけていましたが、シーズン中にいくつかの小さな問題が発生してしまい、後手に回ってしまいました。凱旋門賞に向けて非常に良い状態にあると思っていたのですが、そうはなりませんでした。今年の彼を楽しみにしています。」

キーファーズとの共同所有馬であるジャパン。

昨年はプリンスオブウェールズSから始動しエクリプスSキングジョージ、愛・英チャンピオンSと中長距離の王道路線を転戦しましたが、最高でもエクリプスSキングジョージの3着*1と目立った好走をすることはできませんでした。

凱旋門賞でも直前にエイダン厩舎の禁止薬物騒動に巻き込まれ出走取消と、運にも見放された一年だったように思います。

コメントでは昨年より状態は良いとのことなので、今年こそはGⅠ戦線でも好走して最終的には武豊騎手を背に凱旋門賞に出走してもらいたいです。

  • Love ラヴ(ラブ) 4 牝

Galileo 母Pikaboo(母父Pivotal)

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Love

「彼女はとても順調です。彼女はたくさんの仕事をしてきましたし、優秀で前向きです。いつでもスタートできる準備はできています。しかし、タタソールズゴールドCに向けて行われるリステッドレースやグループレースは、しばしば道悪で行われることがあり、理想的にはそのような馬場でのスタートを彼女にお願いしたくはありません。必要であれば、タタソールズゴールドCに向けて準備をするために多少の休暇を取るでしょうが、どのような形であれそれが彼女の最初の大きな目標となります。私は、彼女が2000mから2400mでキャンペーンを行うことを想像しています。彼女はとても自然体です。彼女は仕事仲間と一緒に半分のスピードで走っているだけなんです。彼女にとってはとても簡単なことなのです。私たちは、彼女がトラックに戻ってくることをとても楽しみにしています。」

1000ギニーを勝って臨んだオークスを9馬身差の圧勝で制し牝馬二冠を達成したラヴ。

続くヨークシャーオークスも快勝し一気に凱旋門賞の本命候補に躍り出ましたが、道悪を理由にここを回避。BCターフに行くという選択もあったようですが、最終的にはレースに使わず休養に入りました。

カルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞したラヴ。エネイブルやガイヤースが引退した今、欧州の中長距離路線の中心にいる一頭であることは間違いありません。

2400mも使うということになれば、馬場次第にはなりますが秋には凱旋門賞出走もあり得そうです。

ここ数年は日本でも欧州でも牝馬優勢の傾向が続いていますが、ラヴが連勝を伸ばすようであれば牝馬の時代はまだまだ続くと言ってよさそうです。

Galileo 母Shastye(母父Danehill

「彼はとても順調で、土曜日に行われるシーマクラシックのためにドバイに行きました。今シーズンは、昨年の12月中旬までレースに出ていたことが救いでした。彼は身体的に非常に強く、かなりの重量があります。彼はスプリンターやマイラーのような体つきをしていますが、もちろん中距離馬であることもわかっています。メイダンの平坦馬場や良馬場は、どちらも彼に合っていると思います。今年の初出走にしては、私たちも満足しています。いつかは2000mの距離に戻すことも考えています。」

ジャパンの全弟。

ダービーではサーペンタインの6着に終わったもののパリ大賞はしっかりと勝ち切り、いざ凱旋門賞へと思っていた矢先に前述の禁止薬物騒動で出走取消に。

気を取り直してアメリカ遠征に向かったものの、BCターフでは実力を出せずタルナワの5着。さらに転戦した香港ヴァーズでは逃げ粘るエグザルタントを外から差し切り3馬身差の快勝と、力を発揮できれば強い競馬を見せる馬です。

さっそく今週末のドバイミーティングではシーマクラシックで日本のクロノジェネシスやサウジカップ馬ミシュリフら中長距離の世界的強豪達とぶつかり、さながら凱旋門賞の前哨戦のようなメンバーになっています。

ドバイの馬場は日本馬に分があるのでクロノジェネシスが勝つと思っていますが、凱旋門賞では強力なライバルになりそうです。

  • Order of Australia オーダーオブオーストラリア 4 牡

父Australia 母Senta's Dream(母父Danehill

「体力的にも、冬の間にとても良くなっています。我々は1マイルの距離を使い続けるつもりだし、シーズン前半のクイーンアンSは明らかに狙い目です。その前にも出走するかもしれません。今年の彼を楽しみにしています。」

BCマイルでは41倍の14番人気ながら激走し、サーカスマキシマスやロペイフェルナンデスを抑え優勝しエイダン厩舎のワンツースリーを決めました。

その後は香港マイルに行きましたがゴールデンシックスティやアドマイヤマーズの前に6着に終わりました。

クイーンアンSロイヤルアスコット開催におけるマイル最強馬決定戦で、昨年はサーカスマキシマスが制しています。

* Santiago サンティアゴ 4 牡

父Authorized 母Wadyhatta(母父Cape Cross

「冬の間の彼の成長には満足していますし、オーストラリアで走らせなかったのは正しい判断だったと思います。体質的には、3歳から4歳にかけて大きく変わりました。彼はとても自然に調教をしていて、順調に進んでいます。長距離馬にしては、調教でもペースを見せてくれます。頭脳明晰で、健全で、素直な馬です。おそらく早めにスタートさせて、ゴールドカップ馬にすることを考えています。ナヴァンで行われるヴィンテージクロップSに出走する可能性もあります。」

昨年の愛ダービー馬です。

その後グッドウッドCではストラディヴァリウスに、セントレジャーSではジョセフ・オブライエン*2調教馬のガリレオロームに敗れています。

アスコットゴールドCで4連覇がかかるストラディヴァリウスとぶつかることになれば面白そうです。

  • Serpentine サーペンタイン 4 牡

Galileo 母Remember When(母父Danehill Dancer

「彼はフルに調教をしていてとても順調です。3歳から4歳になると大きく変わると思っていましたが、その通りになりました。この馬は馬場に左右されず、大きなエンジンを持っています。パリ大賞での走りには満足していますし、凱旋門賞では怪物のような走りが見られると思っていましたが、残念ながら出走できませんでした。彼は2400mの距離を維持しますが、2000mでも快適に走れると思います。彼はとても素直で純粋です。今年の彼には期待しています。」

昨年の英ダービー馬。大逃げをうちエイダン陣営のラビットかと思って見ていましたが、直線に入っても差は縮まらずそのまま逃げ切ってしまいました。

パリ大賞英チャンピオンSでは4着でした。

3歳馬(3歳 牡・牝)

  • Battleground バトルグラウンド 3 牡

父War Front 母Found(母父Galileo

「私たちは彼にとても満足しています。もともと大きな馬でしたが、冬の間にすっかり体が太くなりました。彼は素晴らしく、前向きです。今、彼はとても簡単に調教をこなしています。これ以上の幸せはありません。彼はニューマーケット2000ギニーに直行すると思います。彼は、1マイル以上の距離を望む馬ではないと思いますが、Declaration Of Warという同じWar Front産駒は最終的に2000mを走ったので、完全に除外することはできません。」

2歳G2ヴィンテージSを完勝した後に向かったBCジュヴェナイルターフでは2着。母はあの凱旋門賞ファウンドという良血馬です。

2000ギニーブックメーカーオッズではラドブロークス、コーラルで8倍、ウィリアムヒルで7倍、パディパワーで5.5倍と、各社ともに1番人気に押されています。*3

  • St Mark’s Basilica セントマークスバシリカ 3 牡

父Siyouni 母Cabaret(母父(Galileo

「彼の状態は良く、冬の間の成長にも満足しています。計画では、ニューマーケットで行われる2000ギニーに出走することになっています。デューハーストSでこのコースを経験したことは、彼がこのコースに戻るときの助けになるでしょう。彼は素直で正直な馬で、素敵な心を持っています。彼はとてもリラックスしているので、1マイル以上の距離を走るチャンスがあるかもしれませんが、ペース不足なので当面はマイル戦を目標にしています。」

昨年のデューハーストS*4を制し、2歳馬最高となるレーティング120を獲得しました。

American Pharoah 母Imagine(母父Sadler's Wells)

「彼は冬の間、信じられないほどよくやってくれて、私たちは彼にとても満足しています。彼は大きなパワーを持った馬に成長しました。去年は彼からたくさんの経験を得たし、彼の精神面はとても良いです。彼はギニー(1600m)を走るのに十分なペースを持っていますが、彼のプロフィールを見る限り、2400mは走れるでしょう。彼は間違いなく良馬場を好むでしょう。」

昨年のクリテリウム・アンテルナシオナル*5を制し、カルティエ賞最優秀2歳牡馬を受賞しました。

アメリカンファラオ産駒としては2頭目のGⅠ勝利馬です。*6

*1:キングジョージは3頭立ての3着で大差負け

*2:エイダンの長男。弟はドナカ・オブライエン

*3:全て3月26日現在

*4:ニューマーケットで行われる1400mの2歳GⅠ。欧州における最重要2歳GⅠで、錚々たる名馬がこのレースを制している。近年ではフランケル、ニューアプローチ、ロックオブジブラルタルなど。

*5:またはクリテリウム国際。仏サンクルーで行われる1600mの2歳GⅠ。過去の勝ち馬にサンダースノー、バゴ、ダラカニなど。

*6:初勝利はハーヴェイズリルゴイルのクイーンエリザベス2世チャレンジカップS。3頭目フェブラリーSを制したカフェファラオで、産駒初のダートGⅠ勝利馬となった。

令和版「世紀の対決」

「世紀の対決」

競馬ファンが「世紀の対決」と聞いて真っ先に思い出すのは、トウカイテイオーメジロマックイーンの最初で最後の対決となった1992年の天皇賞・春だろう。

競馬を見始めてまだまだ日が浅く、そもそも1992年にはまだ生を受けていなかった筆者にとっては、その当時の盛り上がりは当然ながら知るはずもない。

過去を振り返ると、戦績だけを見ればトウカイテイオーメジロマックイーンレベルの馬が複数頭顔を合わせたレースは多数ある。

それなのになぜこのレースだけが「世紀の対決」と呼ばれたのだろう。

92年天皇賞・春を振り返った記事などを読むと、各馬の血統的背景、歩んできた路線に付随するそれぞれの人気、またその当時の景気にも支えられたまさに全盛期とも言うべき競馬人気に後押しされ、スポーツという話題の垣根を越えて大衆の関心事になったことが大きいということらしい。

つまり出走する馬の強さだけでなく、大衆全体を巻き込むような競馬熱が必要ということか。

2020年ジャパンカップ

今年のジャパンカップのメンバーを今更詳しく語る必要もない。

一足先に無敗の牝馬三冠を達成したデアリングタクトがジャパンカップ出走を表明すると、翌週の菊花賞で無敗の三冠を達成したコントレイルもそれに応じるようにジャパンカップ参戦を表明。

さらに翌週、平地GⅠ最多の8勝を挙げたアーモンドアイが引退レースにジャパンカップを選択したことで、三冠馬三頭揃い踏みのレースになることが決まった。

三冠馬が複数頭同一レースに出走したのは、シンボリルドルフミスターシービーが3回*1オルフェーヴルジェンティルドンナが1回*2の計4回しかない。

もちろん三冠馬3頭が顔を揃えたのは今回が史上初めてのことだ。

まさに「世紀の対決」と呼ぶにふさわしいメンバーが揃ったと言えるだろう。

であれば、"競馬熱"の方はどうか。

繰り返しになるが筆者は92年当時の、先代「世紀の対決」の頃の競馬人気は経験していないので、比較してどうこうと言うことはできない。

しかしながら、少なくとも筆者が競馬を見るようになった2018年以降では、一つのレースにかかる盛り上がりとしては間違いなく過去最高のものだった。

その盛り上がりの余波は競馬ファンだけではなく、普段競馬を見ないような人たちにまで伝播していたという実感がある。

NHKや民放ではコントレイルとデアリングタクトの特集番組を制作しジャパンカップ直前週にも再放送をしていたり、スポーツ紙ではない一般紙でも取り上げられていた。*3

92年のようにテレビやラジオ、新聞だけの時代ではなく、様々な情報媒体で特定のコミュニティが活動を広げられる現代*4でも、大衆の目に留まるところでこういった扱いを受けるというところに伝播の一端を感じるように思う。

また筆者個人の話をすれば、過去にたった一度だけ競馬場に誘ったことのある友人から、ジャパンカップの馬券の買い方のアドバイスを求められた。

その一度以来競馬の話をしたことはなかったため非常に驚いたと同時に、そのようなあまり競馬に関心を持っていない人にまでこのレースが関心事として受け入れられているという事実にとても嬉しくなった。

多少強引かもしれないが、これらのことから現代なりの"競馬熱"は醸成されていたと考えたい。


メンバーレベルと前評判だけでなく、実際のレースはどうだったのかと言えば、まずは自分の目で見るのが一番だろう。

youtu.be


馬券の勝ち負けこそあれ、レースを見た人々の率直な感想はおそらく同じようなものになるのではないだろうか。

少なくとも筆者は、最高のメンバーで行われた最高のレースだったというように思う。

アーモンドアイは筆者が競馬を見始めた2018年に牝馬三冠を達成し、返す刀でジャパンカップ優勝とあっという間にトップホースの階段を駆け上がった。

その後も日本競馬の中長距離路線には常にこの馬が君臨し続け、勝った時も負けた時も話題の中心だった。

再び個人的な話になるが、まさに筆者の競馬歴はこの馬と共にあったと言っても過言ではない。

2019年の有馬記念での大敗はショックが大きかったが、決意を新たにし以降全レースで本命を打ち続けると心に決めた。*5

GⅠ8勝も達成し、三冠馬2頭の挑戦状を受ける形で臨んだこの舞台。正直不安がない訳ではなかった。

レース間隔は言わずもがな、当日の馬場も必ずしもこの馬に味方はしないと思っていたし、何より三冠馬2頭は本当に強い。

特にコントレイルの菊花賞は並の馬なら負けていたレースだ。

まさに無敗三冠馬に相応しい、底なしの強さを見せたレースで、デアリングタクトも斤量の有利に加え過去の三冠牝馬アーモンドアイやジェンティルドンナが勝ったように相性の良い秋華賞ローテで挑んでくる。

この馬たち相手に、アーモンドアイは不安を抱えて勝ちきれるだろうか。

そんなことを延々と考え予想も悩んだが、最終的にはここまで共に歩んできたアーモンドアイに託すことにした。


結果は筆者にとって最高の結果となり、三冠馬2頭も強さを見せる内容で、勝ち負けを抜きにしてもメンバーレベルを証明するような素晴らしい内容だった。

コントレイルやデアリングタクトを本命にして悔しい思いをした人もいただろう。

しかし、このレースの内容自体にケチをつけるような人はほとんどいないのではないかと思われる、そのくらい素晴らしいレースだった。

令和版「世紀の対決」

92年の頃を知る人に当時の競馬人気を聞けば、きっと「こんなものではなかった」という答えが返ってくるだろう。

もちろんその頃の熱狂的とも言えるような競馬熱は当時だけの半ば一過性のものだっただろうし、今更それを同じものを望んでいる訳でもない。

20世紀には20世紀の競馬人気があったように、21世紀には21世紀の競馬人気*6があり、さらに言えば令和には令和の競馬人気のあり方があっても良いのだ。

メンバーレベル、競馬熱、実際のレース内容の、三拍子揃った2020年ジャパンカップ

21世紀版、いや令和版「世紀の対決」と呼ぶにふさわしい一戦だったのではないだろうか。

*1:1984ジャパンカップ有馬記念、1985年天皇賞・春

*2:2012年ジャパンカップ

*3:有終のアーモンドアイ、無敗馬2頭が挑む 29日ジャパンカップ 三冠馬世紀の対決https://www.sankei.com/premium/news/201127/prm2011270002-n1.html

*4:わざわざテレビや新聞などの巨大メディアを使わずとも、TwitterSNSなどで十分にコンテンツを発展させることができるという意味において。

*5:無論その前からアーモンドアイが走ったレースは全て本命を打っていた。

*6:ディープインパクトを中心とした一連のムーブメントが挙げられるだろう。

ハムダンさんは紛らわしい

中東の石油王ハムダンさんとそれを取り巻く女の子たちとのキャッキャウフフなハーレム日常アニメのレビューを期待してこのページを開いた人たち、残念でした。

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競馬の話です。



こんにちは。

前回の記事で後編を書くと言いながら見事にスルーしてしまいました。

その時は書こうと思っていても、基本的にやる気が5分しか続かない性分なので…

今後もそのあたりはご容赦ください。

さて、今回はハムダン氏に関する小話です。

私が個人的に感じた疑問についてちょっと調べてみたというだけの話ですが、これがなかなかに紛らわしく放っておくとまたいつか勘違いしそうなので、ここで記事として残しておくことにします。

ジャック・ル・マロワ賞

事の発端は2020年8月16日に行われるジャック・ル・マロワ賞の出走メンバーを調べていた時のことです。

ジャック・ル・マロワ賞 (Prix Jacques le Marois) とはフランスのドーヴィル競馬場で行われるマイル(1600m)のGⅠで、ロンシャン競馬場で行われるムーラン・ド・ロンシャン賞と対をなすフランス最高峰のマイルレースです。

イスパーン賞を制したペルシアンキング、ロイヤルアスコット開催でGⅠを勝利したパレスピア、アルパインスター、サーカスマキシマス、昨年の覇者ローマナイズドなど、前日の15日段階で登録7頭中GⅠ馬が5頭という豪華顔ぶれが揃いました。

world.jra-van.jp

各出走予定馬を上記のJRA-VAN Ver.World*1を使い一通り予習していたのですが、パレスピアのページに気になる箇所がありました。

6月のロイヤルアスコット開催で行われたセントジェームズパレスステークス(GⅠ・芝1600m)を勝利したパレスピアですが、馬主の欄に「シェイク・ハムダン・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム」と書いてあります。

海外競馬に関心がある方ならご存知かもしれませんが、ここに記載のあるハムダン・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム氏(以下ハムダン殿下)*2は競走馬のオーナーブリーダーで、ドバイの副首長も務めています。*3

ハムダン殿下といえば青を基調に両肩に白のワンポイントが入った勝負服でお馴染みで、最近だとサセックスステークスを勝ったモハーザー、サンタラリ賞を勝ったタウキールなどの活躍馬がいます。

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Mohaather

対して、パレスピアの勝負服は以下です。

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Palace Pier

前回紹介したクールモアなどはいくつか勝負服を持っていて使い分けますが、ハムダン殿下所有の馬でパレスピアのクリーム色の勝負服を見たことがありません。

これはどういうことなのでしょうか。

もう一人のハムダン氏

結論から言うと、パレスピアの馬主であるハムダン氏と、ハムダン殿下としてお馴染みのハムダン・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム氏は別人です。

先の疑問について簡単に調べたところ、このような記事を見つけました。

highrise.hatenablog.com

この記事の内容を要約すると、主要な海外競馬関係者でハムダンという名を持つ人物は二人いて、一人はゴドルフィン総帥モハメド殿下の兄・ハムダン殿下(ハムダン・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム)、もう一人がモハメド殿下の息子であるハムダン・ビン・モハメド・アール・マクトゥーム氏ということです。

そしてパレスピアの馬主は、後者であるハムダン・ビン・モハメド・アール・マクトゥーム氏(以下ハムダン皇太子)です。

英国の海外競馬情報サイトであるRacing Postによると、パレスピアのOwnerは「Sheikh Hamdan bin Mohammed Al Maktoum」となっており、確かにハムダン皇太子が馬主だと分かります。

www.racingpost.com

つまり、私が疑問に思ったJRA-VAN Ver.Worldのパレスピアのページの馬主欄の記載は誤りだということです。

先程参考に上げた記事では、ハムダン皇太子が所有していたEastern Anthemという競走馬のWikipediaにおいて馬主がハムダン殿下になっており、またハムダン殿下の日本語版・英語版Wikipediaでもこの馬が所有馬として記載されているという指摘をしています。

このハムダン氏混同問題はやはり相当紛らわしいもののようで、他でもこういったミスが結構ありそうです。

なにせシェイク・ハムダンというだけでは区別ができず、続く名前がビン・ラーシド(ラーシドの息子のハムダン)かビン・モハメド(モハメドの息子のハムダン)かまでをしっかり把握しないと分かりませんからね…

ちなみに私が信頼を寄せる日本・海外競馬のデータベースサイト「優駿達の蹄跡」

優駿達の蹄跡 - 競馬データベース

では、パレスピアもイースタンアンセムも馬主欄はしっかりハムダン皇太子となっていました。流石です。

まとめ

以上、ちょっとした疑問を解消した小話でした。

これを読んだ人の中で誰かやる気のある方はJRA-VAN Ver.Worldのお問合せページから誤りの指摘をお願いします。

私はやる気が5分しか続かないので、もっと言うと面倒くさいのでしませんが。

なおハムダン皇太子ですが、どうやらイケメンで有名らしく「ハムダン皇太子」で検索すると競馬と全く関係のないサイトが取り上げていたり、イケメンと呼ばれるのも納得の様々な写真が出てきます。

競馬を知らない人の方がむしろ引っかからないのでは…?

*1:JRAの子会社が運営する競馬情報サービスJRA-VAN内の、海外競馬特集サイト。

*2:「シェイク」とはアラビア語で首長や知識人を表す尊称シャイフの英語読み。

*3:弟はUAE首相兼ドバイ首長、競走馬管理団体ゴドルフィンのトップでもあるモハメド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム氏(シェイク・モハメドまたはモハメド殿下)。