クールモアの有力馬2022
毎年恒例のバリードイルのステーブルツアーを紹介します。
古馬は全頭、3歳馬は何頭かピックアップする形で紹介します。
なおエイダン・オブライエン厩舎の管理馬一覧は、以下ツイートのリンク先からAIDANOBRIENFANSITE様作成のPDFで確認できます。
AS PROMISED HERE IT IS
— AIDANOBRIENFANSITE (@aobrienfansite) 2022年3月20日
The Ballydoyle Juveniles 2022 & Horses In Training 2022 Magazine
It's in PDF format & is only 7MB download your free copy here 👇https://t.co/ZUri60rN9v pic.twitter.com/D8bZz9v9Yu
調教師のコメントはDeepL翻訳を利用しています。
古馬(4歳以上 牡・牝)
- Bolshoi Ballet ボリショイバレエ 4 牡
「彼は復帰の途上にあります。彼は準備の初期に小さな骨折をしたため、その影響で私たちはすっかり遅れをとってしまいました。復帰は、早くてもシーズン中盤になると思います。」
まずはボリショイバレエ。昨年はレパーズタウンのGⅢバリーサックスS、愛ダービートライアルと連勝し、堂々の1番人気でCazooダービーに臨みましたが結果は7着。
気を取り直して向かったアメリカではベルモントダービーを制してGⅠ初勝利を挙げました。
ターフトリニティ*1制覇を目指しサラトガダービー、ジョッキークラブダービーに出走しましたが、共に4着。
その後もBCターフ6着、香港カップ9着と、良いところなく2021年のシーズンを終えています。
今年は復活を期して臨むシーズンとなるはずでしたが、骨折してしまった模様。
復帰はシーズン中盤以降とのことで、万全の態勢でベルモントダービー馬が戻ってくることを願っています。
- Broome ブルーム 6 牡
父Australia 母Sweepstake(母父Acclamation)
「ブルームはまだ復帰の途中です。前走のジャパンカップの後、鞍を外している時に馬に蹴られて脛骨を骨折し、しばらく休養を余儀なくされました。ロイヤルアスコットに出走できるようになるといいんですが。」
キーファーズとの共同所有馬であるブルーム。
シーズン初戦から3連勝で臨んだタタソールズゴールドカップではヘルヴィックドリームの僅差の2着。
その後ロイヤルアスコットでのハードウィックS2着を挟んで向かったサンクルー大賞では、逃げの戦法に出て待望のGⅠ初制覇を挙げました。
フォア賞ではディープボンドの2着、凱旋門賞では武豊騎手を鞍上に迎え臨みましたが11着。
またBCターフでは直線でユビアーの強烈な追い込みに屈し半馬身差の2着に敗れました。
その後は日本に遠征しジャパンカップに出走するも11着と振るわず、レース後には第4中手骨の骨折が判明。全治3カ月と診断されました。*2
エイダン厩舎唯一の6歳馬で、今シーズンも現役を続行するようです。ロイヤルアスコットに間に合うか微妙なようですが、間に合えば距離的にプリンスオブウェールズSになるでしょうか。
前述したように2着が多い馬で、今季はサンクルー大賞以来の勝利を期待したいです。
- High Definition ハイデフィニション 4 牡
父Galileo 母Palace(母父Fastnet Rock)
「週末に行われたカラでの調教ではとても良い動きを見せてくれたので、来月のアレジッドSか5月のムーアズブリッジSのどちらかで始動させることを考えています。今となっては、昨シーズンの彼は弱すぎたのかもしれません。2歳時に2回目の出走をさせたのはやりすぎだったかもしれませんし、私たちが考えていた以上に力を出し切ったのかもしれません。」
2歳時のベレスフォードSでは最後方から豪快に差し切り勝利を収め、そのパフォーマンスからCazooダービーの有力候補と目されました。
しかし2021年は血液検査の結果などで問題が発生し復帰が遅れ、ダービーの前哨戦ダンテSでようやく始動したもののハリケーンレーンの3着。ダービーは回避して愛ダービーへ回ることになりましたが、全く伸びず10着に沈みました。
その後もグレートヴォルティジュールS、英セントレジャーを使いましたが結果は残せず。そのまま休養に入りました。
ベレスフォードSの評価が非常に高くブックメーカーでは長らくダービー1番人気に支持されており、筆者もPOGザワールド*3で指名馬に挙げるほど個人的に期待していたので、ダンテSはともかく愛ダービー10着はショックでしたね…
昨年終盤の走りを見ると正直復活は難しいかなとも思ってしまいますが、まずは今シーズン初戦でどこまで状態が戻っているかに注目したいところです。
- Mother Earth マザーアース 4 牝
父Zoffany 母Many Colours(母父Green Desert)
「彼女は、ここで調教を続けている主力の古牝馬です。カラでの復帰戦勝利には満足しており、この勝利は彼女にとって大きな収穫となるでしょう。シーズンを通して1マイル以上のGⅠレースでは、牝馬はもちろん牡馬相手でも多くの選択肢があるはずです。」
昨年は始動戦の英1000ギニーでクラシック制覇。
その後はプール・デッセ・デ・プーリッシュ*42着、コロネーションS3着、ファルマスS2着、ロートシルト賞1着、メイトロンS3着、サンチャリオットS2着と非常に安定した走りを見せました。
牡馬と激突したクイーンエリザベスⅡ世S、BCマイル、香港マイルでは5着、10着、4着と着順を下げましたが、年間を通してマイルGⅠ計10戦を戦い抜いたのは立派でした。
3月26日のパークエクスプレスSでは早速復帰戦勝利を挙げています。
サンタバーバラ*5やスノーフォール*6の早世などもあり厩舎唯一の古馬牝馬となってしまいました。かつての同僚たちの意志も引継ぎ、今年もマイル路線の中心的存在として引っ張っていってほしいです。
なお、記事執筆時点でロッキンジSとタタソールズゴールドカップにエントリーしています。*7
- Order Of Australia オーダーオブオーストラリア 5 牡
父Australia 母Senta's Dream(母父Danehill)
「前走のブリーダーズカップマイル*8で小さな骨折を負ったが、今は復帰して絶好調です。昨シーズンは周りのベストマイラーに肉薄し、よく調子を維持していました。最初の大きな目標としては、ロイヤルアスコットのクイーンアンSを考えています。その前にレースで走らせるか、競馬場で調教を行うかは、時期が近づいてから決めたいと思います。ロッキンジSには間に合わないと思います。」
昨年は古牡馬のマイル路線を歩みフランスではジャックルマロワ賞、ムーランドロンシャン賞で3着、2着と好走しましたが、GⅠ勝利は挙げられませんでした。
前走のアメリカ遠征では骨折した影響もあってか12着と沈みましたが、既に回復しているようです。
GⅠ4勝のイリデッサ、前述したサンタバーバラの半弟という超良血。一昨年のBCマイル以来のGⅠ勝利を期待したいです。
- Wordsworth ワーズワース 4 牡
父Galileo 母Chelsea Rose(母父Desert King)
「週末にカラで追い切りをしました。いい状態を保っていると思います。4月23日にナヴァンで行われるヴィンテージクロップSから始動するかもしれません。」
基本的に長距離路線を使われており、愛ダービー、パリ大賞ではハリケーンレーンの3着、2着。
グロリアスグッドウッド開催のゴードンS、また愛セントレジャートライアルは共に5着と、この馬何気にデビュー以来掲示板を外したことがありません。(なお勝利はメイドン戦の1回だけ…)
復帰戦と予想されるヴィンテージクロップSは2800mで、過去にオーダーオブセントジョージ、フェイムアンドグローリー、イェーツと長距離界の超一流馬たちが勝ってきたGⅢレースです。
その他のレースとしてはヨークシャーカップとタタソールズゴールドカップに登録があります。
3歳馬(3歳 牡・牝)
- Luxembourg ルクセンブルク 3 牡
父Camelot 母Attire(母父Danehill Dancer)
「週末のカラでの動きには皆とても満足しており、直行で2000ギニーに臨むことになるでしょう。この馬とポイント・ロンズデールとの間には大きな差はなく、この2頭には十分なチャンスがあります。2頭ともダービーの距離もこなしてくれることを願っています。彼はキャメロットよりも大きな馬ですが、よりスピードがあると思います。彼は速く走るのが簡単だと思っています。キャメロットはモンジュー産駒で唯一3歳時にマイルのGⅠを勝利しましたが、この馬はおそらく2000ギニーに適しています。」
3戦無敗でフューチュリティトロフィーを制したルクセンブルク。
ブックメーカー各社では現在2000ギニーでゴドルフィンのネイティブトレイル、コロイバスに次ぐ3番人気、Cazooダービーでは1番人気に支持されています。
ちなみにフューチュリティトロフィーは2000ギニーと縁があるレースで、過去4年の勝ち馬のその後を見ると
2017年 サクソンウォリアー 2000ギニー1着
2018年 マグナグレシア 2000ギニー1着
2019年 カメコ 2000ギニー1着
2020年 マックスウィニー 愛2000ギニー1着
以上のように英か愛の2000ギニーを制しています。この流れがルクセンブルクにも続くでしょうか。
なおWesterbergとの共同所有馬で、画像の勝負服はWesterbergのものです。
Westerbergはゲオルグ・フォン・オペル氏が運営する競馬組織で、前述のハイデフィニションやサンタバーバラも共同所有しており近年クールモアと結びつきを強めています。
氏はドイツの自動車メーカー「オペル」の創業者アダム・オペルの曾孫で、レースやビジネスで財を成しているようです。*9
またクールモアの近年の動向を見ると、Westerbergがクールモアに接近しているというよりも、クールモア側が積極的に共同所有を進めているように感じます。
日本のキーファーズもその一環でしょうし、ゲイリー&メアリー・ウエスト夫妻とのマキシマムセキュリティや、フラックスマンステーブルズ*10とのサーカスマキシマスなどアメリカやフランスの大物馬主とも共同所有を進めています。
- Point Lonsdale ポイントロンズデール 3 牡
父Australia 母Sweepstake(母父Acclamation)
「週末のカラでの彼の追い切りにはとても満足しています。彼とルクセンブルグが一緒に追い切りをしたのは初めてでした。この2頭はとてもよく動いたと思うし、このまま2000ギニーに行かせるつもりです。彼は父親のオーストラリアを思い出させます。彼は素晴らしい頭脳を持っていて、とても勇敢です。スピードも十分で、距離も持ちます。昨シーズンは柔らかい馬場でレースをすることが多くありましたが、この馬は良い馬場を好みます。」
4連勝で迎えたヴィンセントオブライエンナショナルSでは、昨年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ネイティブトレイルの2着に屈しました。
ネイティブトレイルには3馬身差をつけられ完敗というレースでしたが、ブックメーカーでは2000ギニー4番人気、ダービーではそのネイティブトレイルを上回る2番人気に押されています。
この馬はまだ1400mまでしか経験がないので、距離が伸びてどうなるか楽しみです。
話が逸れますが、前述したPOGザワールドでは3歳馬に5ポイント加算されるので、いかにレーティングを稼げる3歳馬を選ぶかが勝負のポイントになります。
その点、この馬を含めたクラシック上位人気の取捨がキーになるのは間違いなさそうです。
なお昨年のカルティエ賞年度代表馬セントマークスバシリカを含め、毎年のように古馬GⅠ馬を輩出するデューハーストSは、昨年ネイティブトレイルが制しています。
- Star Of India スターオブインディア 3 牡
父Galileo 母 Shermeen(母父Desert Style)
「ギニー馬になりそうなのか、ダービー馬になりそうなのかを判断するために、週末にカラで追い切りを行いましたが、少し鈍いところがあり判断が難しく、必ずしも明確な答えは出ませんでした。のんびりした性格のため、上限を設けたくはありませんが、コースでテストしてみないと、その実力はわかりません。今はまだ、選択肢を広げている段階です。」
1戦1勝のスターオブインディア。2¼馬身差で快勝しています。
エイダンもまだよく分からないらしいです。そんなの我々にも分かる訳ないですね。
- Glounthaune グラウンサウーン 3 牡
父Kodiac 母Khaimah(母父Nayef)
「今週末にレパーズタウンで行われる2000ギニートライアルに出走させる予定です。とても調子が良く、スピードも十分です。昨年4月のデビュー戦の勝利の後、彼には多くの時間を費やし、私たちはシーズンを通して彼に追いつくのに精一杯でした。ブリーダーズカップでの走りは、彼にとってはあまりにも早すぎたのです。ライアンが言うには、彼はまだ未熟で、馬場の適応ができなかったそうです。彼はプーレ・デッセ・プーラン*11馬になれるかもしれません。」
4月にデビュー戦で勝利を挙げた後長く休養し9月のデューハーストSに出てきましたが、ネイティブトレイルの6着。
その後は2000ギニー馬ポエティックフレアが昨年制したレパーズタウンのGⅢキラヴランSを勝利したものの、BCジュベナイルターフでは12着に沈みました。
どうやらフランスに連れていくプランがあるようです。昨年はセントマークスバシリカが仏二冠を達成したことは記憶に新しいですが、その再現となるでしょうか。
- Newfoundland ニューファウンドランド 3 牡
父Deep Impact 母Best In The World(母父Galileo)
「昨年はとてもよく動いていたので、10月のダンドークへの出走を表明しましたが、それは見送ることにしました。彼は賢い馬のように動くので、スタートを切るのが楽しみです。」
まだ未出走のニューファウンドランド。ダービーではブックメーカーで26倍程です。
何と言っても父ディープインパクト、そしてあのスノーフォールの全弟です。
未出走ながらダービーで一定の支持があるのも、全姉が見せたエプソムでの圧倒的なパフォーマンスが念頭にあることは間違いありません。
伯母にも凱旋門賞馬ファウンドがいる超良血。期待は大きいです。
- Tenebrism テネブリズム 3 牝
父Caravaggio 母Immortal Verse(母父Pivotal)
「週末のカラでのテネブリズムの動きにはとても満足しています。ライアンも彼女にとても満足していました。彼は彼女がマイルを走る可能性は十分にあると感じていました。7.5ハロンの良い追い切りを行い、彼女はそこから良い経験を得ています。彼女は1000ギニーに直行するでしょう。」
前走ニューマーケットのチェヴァリーパークSを制し、2戦2勝でGⅠ初勝利を挙げたテネブリズム。
父は世界のスキャットダディ産駒カラヴァッジオ、母はマイルGⅠ2勝のイモータルヴァース。
1000ギニーのブックメーカーでは、昨年フィリーズマイルを制しカルティエ賞最優秀2歳牝馬に輝いたインスパイラルに次ぐ2番人気です。
馬主はクールモアと前述のWesterberg、生産者であるMerribelle Stablesとの共同所有です。
- Tuesday チューズデー 3 牝
父Galileo 母Lillie Langtry(母父Danehill Dancer)
「日曜日のネースでのパフォーマンスにはとても満足しています。彼女はこのレースで大きく成長したし、距離も持ちそうな馬です。彼女はリラックスしており、のんびりしています。1000ギニーにはまだ早いかもしれないので、ギニーのトライアルでもう一度走らせてから、アイルランド1000ギニーに挑戦することになるかもしれません。その後、オークスの有力馬になるかもしれません。」
母はGⅠ2勝のリリーラングトリー、全姉に英牝馬二冠を含むGⅠ7勝のマインディングや愛1000ギニー馬エンプレスジョセフィーヌを持つチューズデー。
デビュー戦こそ後のGⅠモイグレアスタッドS勝ち馬Discoveriesに短アタマ差の2着に惜敗したものの、3月27日のネースでのメイドン戦で初勝利を挙げました。
愛1000ギニーが目標となるようですが、ミュージドラステークスから英オークスを目指すプランもあるようです。*12
なおこの馬もWesterbergとの共同所有です。
*1:NYRA(ニューヨーク州競馬協会)主催のニューヨーク3歳芝三冠競走
*2:https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=196614
*3:グリーンチャンネルの番組「Go Racing!」で毎年企画されている世界版のペーパーオーナーゲーム。2022年の概要は下記のリンク先から。 https://www.greenchannel.jp/program/goracing.html
*5:米に遠征しGⅠ2勝。9月に骨盤骨折で死亡。
*6:16馬身差で圧勝した英オークス含むGⅠ3勝を挙げたディープインパクト産駒。2022年1月に骨盤骨折で死亡。
*7:日本と違い登録イコール出走ではないことに注意。
*8:BCマイルではなくキーンランドターフマイルだと思われる。
*9:詳しくは以下リンク先を参照。 https://www.racingpost.com/bloodstock/westerberg-buys-into-coolmore-classic-hopefuls-high-definition-and-santa-barbara/468436
*10:ニアルコスファミリーの馬主・生産組織。